Mareuil-sur-Aÿ / マルイユ=シュル=アイ

マルイユ=シュル=アイは、「アイは名声、マレイユは美酒」と地元で語り継がれてきたプルミエ・クリュ(一級畑)の村。エシェル・デ・クリュ99%という最高評価を誇り、栽培面積の84%をピノ・ノワールが占める。ビルカール・サルモンフィリポナという二大メゾンを擁し、とりわけ急峻な南向き斜面に広がるモノポール畑「クロ・デ・ゴワス」は、シャンパーニュ随一の単一畑として世界中のコレクターを惹きつけてやまない。

基本情報

地域圏(Région)Grand Est
県(Département)Marne
区(Arrondissement)Épernay
郵便番号 : 51160
面積 : 11.48 km2
Coomune内の主要な地区
Aÿ, Bisseuil,
隣接するクリュ(Coomune)
Chouilly, Plivot, Oiry, Avenay-Val-d'Or, Mutigny, Aÿ-Champagne,

「Mareuil-sur-Aÿ」のぶどう畑

テロワールVallée de la Marne
- Grande Vallée de Marne
格付け99% Premier Cru [?]
栽培面積294.3 ha
- Chardonnay25.6 ha (8.7%)
- Pinot Noir248.7 ha (84.5%)
- Pinot Meunier20 ha (6.8%)
- その他0 ha (0%)

特徴

マルイユ=シュル=アイのシャンパンを飲むと、まず果実の密度の高さに気づく。アイグラン・クリュに匹敵する凝縮したダークベリーの香りに、チョーク由来のきめ細かい塩気がのり、余韻にじわじわと広がる深みが心地よい。 フィリポナの「クロ・デ・ゴワス」はオーク樽で熟成されるため、ドライフルーツやスパイスのニュアンスが加わり、開けたてより数年後に本領を発揮する。一方、ビルカール・サルモンの「クロ・サン=ティレール」は繊細なテクスチャーの中に芯のある酸が走り、骨格のしっかりしたスタイルだ。 豊富なピノ・ノワールの骨格があるため、脂の乗った魚料理や鴨のロースト、熟成したハードチーズとの相性が抜群。デリケートな泡を楽しむというよりも、食事を通じてじっくり向き合いたい飲み手に届くシャンパンだ。

テロワール

マルイユ=シュル=アイのテロワールを決定づけているのは、村の東端でマルヌ運河に迫る急峻な南向き斜面だ。日照を正面から受けるこの斜面はピノ・ノワールの完熟を促し、隣接するアイ=シャンパーニュグラン・クリュ)と地続きの同質なチョーク質(ベレムナイト白亜)土壌が広がる。 アイとの違いは傾斜の鋭さと標高変化にある。クロ・デ・ゴワスが代表するように、運河べりの区画は角度が急で表土が薄く、根が深いチョーク層まで届きやすい。これにより余分な水分が排除され、ミネラル分が豊富な土壌養分がそのままぶどうの凝縮感に直結する。村の市街地に近い平坦な区画ではやや表土が厚くなり、丸みのある果実味が加わる。 北側にはモンターニュ・ド・ランスの南麓が迫り、冬の北風を遮断する自然の壁として機能する。一方、南側はマルヌ河谷に開けているため、温暖な空気が抜けやすく夏の過熟リスクを緩和する。こうした地形の絶妙なバランスが、凝縮したパワーと酸のきれいな輪郭を兼ね持つピノ・ノワールを育む土台となっている。

詳細

マルイユ=シュル=アイは、グランド・ヴァレ・ド・ラ・マルヌのほぼ中央に位置し、西隣のアイ=シャンパーニュと市街地が連続する村だ。マルヌ運河が南縁を走り、北側にはモンターニュ・ド・ランスの南麓の丘陵が迫る。2016年1月1日よりアイ=シャンパーニュ(コミューン・ヌーヴェル)内の委任コミューンに編入されたため、行政上はアイと一体化しているが、ぶどう栽培・醸造の文脈では独自のコミューンとして扱われ続けている。面積1148 ha、人口は約1200人(2013年)。2015年にユネスコ世界遺産「シャンパーニュの丘陵・メゾン・セラー」の構成資産のひとつに登録されている。

周辺コミューンとの位置関係は次のとおり。西がアイ=シャンパーニュ(グラン・クリュ)、北北西がミュティニープルミエ・クリュ)、北北東がアヴネ=ヴァル=ドール(プルミエ・クリュ)、東がビスイユ(プルミエ・クリュ)、南がオワリィ(グラン・クリュ)、南西がシュイィ(グラン・クリュ)と、グラン・クリュ村に三方を囲まれた立地にある。

テロワールの核心はチョーク質(ベレムナイト白亜)に覆われた南向き斜面にある。村東部の急峻な崖沿いの区画はとりわけ傾斜が鋭く、表土が薄いため根がチョーク層深くまで伸び、水はけと保水性のバランスが自然に保たれる。エシェル・デ・クリュ99%はプルミエ・クリュとしての最高評価であり、トキシエール=ミュトリーと並ぶ最上位に位置づけられる。栽培面積の約84%をピノ・ノワールが占めており、ピノ・ノワール主体のグラン・ヴァレとしてアイと対をなす個性を持つ。

村内には注目すべき単一畑(リュー・ディ)が複数存在する。なかでも最も名高いのがクロ・デ・ゴワス(Clos des Goisses)だ。マルヌ運河に面した急峻な南向き崖に広がる5.5 haの区画で、フィリポナが1935年に購入して以来モノポール(独占所有畑)として維持してきた。ピノ・ノワール約70%、シャルドネ約30%を植栽し、オーク樽熟成(40〜75%)によって複雑なアロマと高い熟成ポテンシャルを持つキュヴェを生む。1935年からほぼ毎ヴィンテージ継続生産されており、「シャンパーニュ最初のヴィニュロン指定シャンパン」とも称される。北端の区画「レ・サントル」(Les Cintres)は特別キュヴェとして単独リリースされることもある。

もうひとつの単一畑がクロ・サン=ティレール(Clos Saint-Hilaire)だ。ビルカール・サルモン本邸横のわずか1 haの区画で、もとは庭だったが1964年にピノ・ノワールを植樹。南南東向きのチョーク質土壌で育ったぶどうを100%使用し、1995年ヴィンテージより単独キュヴェ化された。年産3500〜7500本という希少性も相まって、世界的に高い評価を受けている。

歴史的背景として、鉄道が整備される以前はマルヌ運河がシャンパンのパリ輸送において不可欠な動脈だった。マルイユ=シュル=アイはその運河沿いに位置したため、出荷拠点として早くから重要性を持っていた。フィリポナはその前身を1522年に遡るとしており(キュヴェ名「1522」の由来)、現在の形でのマレイユへの移転は1912年。ビルカール・サルモンは1818年、ニコラ・フランソワ・ビルカールとエリザベート・サルモンの結婚を機に創業され、以来200年以上にわたりマレイユに本拠を置くファミリーメゾンとして歩み続けている。「アイは名声、マレイユは美酒」という言い伝えはこうした長い歴史の蓄積から生まれたものであり、グラン・クリュに格付けされることなく99%という評価にとどまりながらも、世界の目利きたちがここを特別視し続ける理由を端的に言い表している。

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