Moussy / ムーシー

ムーシーは、ピノ・ムニエが栽培面積の約59%を占める、コトー・シュッド・デペルネ随一のムニエ産地です。オートル・クリュ格付けながら、シャンパーニュの首都エペルネに隣接するという立地の恩恵を受け、果実味あふれるスタイルのシャンパンを生み出してきました。地元生産者ジョゼ・ミッシェルが体現するように、ムーシーのムニエはトロピカルフルーツを思わせる豊かな香りと、思わず次の一杯を求めてしまうジューシーさが持ち味です。

基本情報

地域圏(Région)Grand Est
県(Département)Marne
区(Arrondissement)Épernay
郵便番号 : 51530
面積 : 2.81 km2
隣接するクリュ(Coomune)
Épernay, Pierry, Vinay, Monthelon, Chavot-Courcourt,

「Moussy」のぶどう畑

テロワールVallée de la Marne
- Côteaux Sud d'Epernay
格付け89% Autre Cru [?]
栽培面積135.4 ha
- Chardonnay42.7 ha (31.5%)
- Pinot Noir12.1 ha (8.9%)
- Pinot Meunier80.1 ha (59.2%)
- その他0.5 ha (0.4%)

特徴

ムーシーのシャンパンは、ピノ・ムニエ主体ならではのジューシーで果実味豊かなスタイルが基本線です。マンゴーやパパイヤを思わせるトロピカルフルーツのニュアンスに、やわらかな酸とほどよいボリュームが重なり、全体的に親しみやすく飲み飽きないキャラクターを持ちます。 地元のジョゼ・ミッシェルはこの個性を最も鮮明に表現する生産者で、ピノ・ムニエ50〜70%の比率でキュヴェを組み、古樹のブレンドをオーク樽熟成させることで、果実感に深みと複雑さを加えています。ムーシーのシャンパンは「ブルゴーニュ的な繊細さ」よりも「素直なおいしさ」を求めるときに輝き、食前酒はもちろん、鶏肉のクリーム煮やシーフードのソテーと合わせると持ち前の果実味がいっそう際立ちます。

テロワール

ムーシーの畑はエペルネ南西の斜面に展開し、キュブリ川が刻んだ谷の一角を占めています。斜面の向きは主に南東〜南向きで、日照を効率よく取り込む配置です。標高は75m前後とヴァレ・ド・ラ・マルヌ域内では比較的低く、川沿いの平地に近い地形が広がります。 土壌の公式記録は限られていますが、コトー・シュッド・デペルネ地区に共通する特徴として、チョーク(白亜)層の上に砂質と粘土質の混じった表土が重なる構成が一般的です。栽培品種の約6割をピノ・ムニエが占めるという事実は、この土壌が保水性のやや高い重めの性質を持つことを示唆しています。ピノ・ムニエは粘土質土壌で本来の力を発揮する品種であり、ムーシーの土地はまさにその特性に応えた自然の選択と言えます。 気候は穏やかな海洋性で、年平均気温は約10.9℃、年間降水量は732mm。東隣のピエリー(プルミエ・クリュ)と畑が連続しており、テロワールとしての連続性は高いものの、チョーク層の露出が多いピエリーと比べ、ムーシーは粘土分の多い土壌がムニエの豊かな果実味を引き出すうえで重要な役割を果たしています。

詳細

ムーシーはエペルネの南西に隣接するコミューンで、コトー・シュッド・デペルネ地区に属します。面積2.81 km²、人口744人(2022年)の小さな村ですが、エペルネの市街地と実質的に連続しており、シャンパーニュ生産の中心地に近接する恵まれたロケーションにあります。東にはプルミエ・クリュのピエリー、西にはヴィネ、南東にはモンテロン、南にはシャヴォ=クルクールが接しています。村の北端はエペルネの森が境界を画し、キュブリ川の谷に沿って畑と集落が広がります。

栽培面積135.40 haのうち約59%(80.10 ha)をピノ・ムニエが占め、シャルドネが42.70 ha(約31%)、ピノ・ノワールが12.10 ha(約9%)と続きます。オートル・クリュ格付けでエシェル・デ・クリュは白黒ともに89%。登録生産者数は99軒と、村の規模に対して多くのグロワールが活動しています。

地元を代表する生産者がジョゼ・ミッシェル(RM)です。1912年のポール・ミシェル創業に始まるファミリービジネスで、ムーシー、ブリュニー=ヴォダンクール、サン=タニャン、ブラスルに計10 haを保有し、年産約9万本。ピノ・ムニエの名手として知られ、スペシャル・クラブ向けにはシャルドネ50%+ピノ・ムニエ50%の古樹ブレンドをオーク熟成で仕上げます。長期熟成リザーヴワインを使った「Père Houdart」や、マグナムで展開する「Collection」など、村の個性を掘り下げたラインナップが世界のシャンパン愛好家から注目されています。

なお、モエ・エ・シャンドン、ポル・ロジェ、テタンジェといった大手メゾンもムーシーの畑から果実を調達しており、村のブドウが高品質なノン・ヴィンテージ・ブレンドを支える一翼を担っています。

ムーシーの歴史は古く、最初の記録は1110年頃にさかのぼります。村名の原形は「Monceiacum」で、シャルモワ修道院の管轄下に置かれていました。その後「Muissi」(1222年)、「Moussi」(1252年)などと変遷し、近代の「Moussy」に落ち着きました。1222年頃の記録にはキュブリ川を利用した水車の存在も記され、古くから水資源を活かした生業が営まれていたことがわかります。

シャンパーニュの歴史における重要な転換点にも、ムーシーは関わっています。1892年8月18日、シャンパーニュ地方で初めてフィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)の被害が確認されたのがこの村でした。さらに1911年には「シャンパーニュ葡萄農家の反乱」にムーシーの農家が参加し、ピエリーの業者施設を破壊してエペルネーへ向かった記録が残っています。この反乱で犠牲となったムーシー出身のポール・ガノンを称え、現在も村内にその名を冠した通りが設けられています。

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