「ブージィ・ルージュ」とは

Bouzy Rouge / ブージィ・ルージュ

シャンパーニュといえば、誰もが泡立つスパークリングワインを思い浮かべる。しかし、このフランス北部の産地には、もうひとつの顔がある。それがブージィ・ルージュ(Bouzy Rouge)だ。 ■ コトー・シャンプノワという原産地呼称 ブージィ・ルージュは、AOCコトー・シャンプノワ(Coteaux Champenois:シャンパーニュ地方の非発泡ワインに与えられる原産地呼称)のもとで造られる赤ワインだ。かつては「ヴァン・ナチュール・ド・シャンパーニュ(vin nature de Champagne)」とも呼ばれていた。使用されるぶどう品種はピノ・ノワール100%。シャンパーニュのスパークリングと同じ原料でありながら、まったく異なる表情を持つワインとして知られている。 コトー・シャンプノワ全体の生産量のうち、赤ワインが約9割を占めており、その中心地がモンターニュ・ド・ランス(Montagne de Reims:ランスの南に広がる丘陵地帯)に位置するブージィ村とアンボネイ村だ。とりわけブージィは、コトー・シャンプノワの赤ワインにおいてもっとも名の通った村とされている。 ■ なぜブージィで赤ワインが生まれるのか シャンパーニュは北緯49度前後という冷涼な産地で、ぶどうをしっかりと熟させること自体が一苦労だ。それでもブージィが赤ワインを造り続けてきたのには、地理的な理由がある。村の畑はほぼ真南を向いた斜面に広がっており、モンターニュ・ド・ランスの丘が北からの寒風を遮ってくれる。おかげでこの村は独自のマイクロクライメット(微気候)を形成し、ピノ・ノワールが赤ワインとして成立するだけの熟度に達しやすい。 ただし、それでも年によって出来栄えは大きく左右される。良年にしか醸造しないというポリシーを持つ生産者も多く、毎ビンテージ必ず登場するわけではない。良年の場合、ブージィ・ルージュの生産量は約4万5,000本ほど。コトー・シャンプノワ全体でも年間平均約7万5,000本という極めて小規模な生産量に収まる、希少なワインである。 ■ どんな味わいなのか ブージィ・ルージュは、赤いチェリーやラズベリーを中心としたフルーツのアロマに、スパイスのニュアンスが重なる。口当たりはシルキーで、チョーク質の土壌(白亜質:白亜紀の石灰岩が風化した土壌で、シャンパーニュの地盤に広く見られる)由来のミネラル感と繊細なタンニンが特徴だ。ブルゴーニュのピノ・ノワールと比べると軽やかでエレガントな印象を持つことが多く、長熟ポテンシャルを秘めた良年のものは数年の瓶熟で複雑さを増す。 1992年に地元生産者たちが設立した「アカデミー・デュ・ヴァン・ド・ブージィ(Académie du Vin de Bouzy)」は、この伝統的なワインの品質維持と普及を目的とした団体で、村の生産者たちの連帯意識の高さを象徴している。 ■ 主な生産者と料理との相性 ブージィの生産者の約3分の2がブージー・ルージュを手がけるとされており、代表的な造り手にはポール・バラ(Paul Bara)、ジョルジュ・ヴェッセル(Georges Vesselle)、ジャン・ヴェッセル(Jean Vesselle)、ピエール・パイヤール(Pierre Paillard)、ブリス(Brice)などが挙げられる。 料理との相性は、軽めの赤ワインが合うものを想像すると分かりやすい。グリルした鶏や仔牛のロースト、ハーブ風味の肉料理などと馴染みがよく、繊細な魚料理やシャルキュトリー(フランスの加工肉料理)とも合わせやすい。 ■ 泡のない、もうひとつのシャンパーニュ体験として 気候変動による温暖化傾向が続く中、ピノ・ノワールの熟度が上がりやすくなっており、ブージィ・ルージュへの注目は近年じわじわと高まっている。シャンパーニュをいくつか飲み慣れてきたら、次のステップとして試してみるのにふさわしいワインだ。泡のないシャンパーニュ──その言葉の矛盾めいた響きこそが、このワインの魅力を言い表している。

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