「コカール」とは
Coquard / コカール
■ 圧搾機としての位置づけ
ワイン造りの最初の重要な工程がプレシュラージュ(圧搾)です。世界各地では籠型の伝統的圧搾機(バスケットプレス)や、空気で膜を膨らませて搾る空気圧式圧搾機(ニューマチックプレス)など、造り手のスタイルや効率性に応じてさまざまな方式が使われています。搾り方ひとつで果汁の清澄度や果皮由来の渋みの出方が変わるため、圧搾機の選択は最終的なワインの個性に直結します。
■ シャンパーニュにおけるコカール式
シャンパーニュ地方で伝統的に使われてきたのは、直径が大きく高さの低い円盤状の垂直式圧搾機です。大量のブドウを薄く広げて短時間で搾ることで、果皮と果汁が触れ合う時間を最小限に抑えられるのが最大の特徴です。シャンパーニュの主要品種には黒ブドウのピノ・ノワールやピノ・ムニエが含まれますが、これらを果皮を着色させずに白い果汁だけで仕込むうえで、この圧搾方式は理にかなった設計といえます。
「コカール」は、この伝統的圧搾機を長年手がけてきたメーカーの社名です。ただ、あまりに広く普及したため、いつしか圧搾機そのもの、あるいはこの搾り方自体を指す言葉として業界内で使われるようになりました。特定企業の製品名でありながら一般名詞のように機能する点は、日本語の「宅急便」や「ホッチキス」に近い現象です。したがって「コカール式」という表現は、いち企業の商品名の話というより、シャンパーニュの伝統的な圧搾方式そのものを指す技術用語として定着していると捉えるのが実情に近いでしょう。
シャンパーニュのAOC規定では、4,000kgのブドウから搾れる果汁量に上限が設けられており、最初に搾れる高品質な果汁は「キュヴェ」、それに続く果汁は「タイユ」と呼ばれて区別されます。この繊細な搾り分けを担ってきたのが伝統的な垂直式圧搾機で、近年は洗浄のしやすさや自動化の面から空気圧式へ切り替えるメゾンも増えていますが、伝統的な仕込みを重視するヴィニュロン・アンデパンダンや一部のメゾンは、今もコカール式を使い続けています。
関連用語
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