Tours-sur-Marne / トゥール=シュル=マルヌ

トゥール=シュル=マルヌは、かつてピノ・ノワールのみグラン・クリュ(100%)、シャルドネプルミエ・クリュ(90%)という「分割格付け」を持った、シャンパーニュでも稀有な経歴の村。現在は両品種ともグラン・クリュに統一され、ローラン・ペリエが本拠を置く名産地として知られる。南向き斜面が育む骨格のしっかりしたピノ・ノワールを、一度は味わってみたい。

基本情報

地域圏(Région)Grand Est
県(Département)Marne
区(Arrondissement)Épernay
郵便番号 : 51150
面積 : 23.51 km2
隣接するクリュ(Coomune)
Plivot, Bouzy, Ambonnay, Condé-sur-Marne, Athis, Jâlons, Aÿ-Champagne, Val de Livre,

「Tours-sur-Marne」のぶどう畑

テロワールMontagne de Reims
- Grande Montagne de Reims
格付け100% Grand Cru [?]
栽培面積52.3 ha
- Chardonnay15.2 ha (29.1%)
- Pinot Noir37 ha (70.7%)
- Pinot Meunier0 ha (0%)
- その他0.1 ha (0.2%)

特徴

栽培面積の約71%をピノ・ノワールが占め、南向き斜面の日照を存分に受けた果実は、黒系果実の凝縮感と骨格のある酸のバランスが際立つ。隣のブジーが「肉厚でふくよか」なスタイルで知られるとすれば、トゥール=シュル=マルヌはやや引き締まった構造感が特徴で、熟成によってカカオやスパイスのニュアンスが開いてくる。 残り約29%を占めるシャルドネは、村の特殊な格付け経緯を象徴する品種。かつてシャルドネのみプルミエ・クリュ扱いだった背景があり、モンターニュ系らしい凛とした酸と柑橘系の清涼感を添える。ローランン・ペリエのグラン・シエクルのようなマルチヴィンテージの大作から、ラミアブルの単一区画キュヴェまで、ピノ・ノワール主体のスタイルを軸にした表現の幅広さが魅力で、ピノ・ノワール好きが次のグラン・クリュを開拓するのにうってつけの産地だ。

テロワール

トゥール=シュル=マルヌの畑は、村自体が位置するマルヌ川沿いの低地とは対照的に、コミューン北部から北東部にかけての南向き斜面に集中している。この斜面はブジーアンボネイといったグラン・クリュ村の畑と連続しており、モンターニュ・ド・ランス丘陵南麓の延長として展開する。分類上はグランド・モンターニュ・ド・ランスに属し、地理的にはマルヌ川に近いものの、畑の性格はヴァレ・ド・ラ・マルヌよりもモンターニュ系に近い。 土壌は白亜(チョーク)質が基盤をなす。代表的な区画「Bas Vigne Goësse」でもその特徴が確認されており、チョーク層が水はけと適度な水分保持を両立させている。隣接するブジーが緩やかな斜面と豊かなチョーク質で重厚なピノ・ノワールを生むのに対し、トゥール=シュル=マルヌはやや傾斜の変化に富み、区画によって土壌の深さや表土の組成が異なる。こうした多様性が、同じグラン・クリュでも区画ごとに個性のある果実を生み出す素地となっている。

詳細

トゥール=シュル=マルヌはマルヌ川とマルヌ運河が合流する地点近くに位置し、アイ=シャンパーニュから東へ約4km、ブジーの南西に接するグラン・クリュ村である。行政上の面積は2,351haに及ぶが、ブドウ畑はその一部にすぎず、コミューン北部から北東部にかけての南向き斜面に52.30haが広がる。モンターニュ・ド・ランスとマルヌ渓谷の境界部に位置するため、地図上ではヴァレ・ド・ラ・マルヌに含まれそうに見えるが、畑の性格と地区分類はグランド・モンターニュ・ド・ランスに帰属する。北北西にはプルミエ・クリュのトキシエール=ミュトリー、北北東にはグラン・クリュのブジー、北東にはグラン・クリュのアンボネイが隣接し、この一帯はモンターニュ南麓グラン・クリュ地帯の東端を形成している。

畑の土壌は白亜(チョーク)質を基盤とし、斜面上部ほど表土が薄く、チョーク層が露出に近い形で現れる。代表的な区画「Bas Vigne Goësse」はコミューン北北西部に位置し、チョーク質土壌の典型的な特性を示す。同じ南向き斜面を持つブジーと比較すると、トゥール=シュル=マルヌの畑は斜面の起伏がやや複雑で、区画ごとに表土の組成や傾斜角が変化する。コミューン北東部には「Côte des Noirs」と呼ばれる工業地帯が存在し、ヴランケン=ポメリー系の大型生産施設が置かれているが、これは主要なブドウ畑エリアとは区別される。

トゥール=シュル=マルヌを語るうえで欠かせない存在が、ローラン・ペリエである。年間約650万本(2014年時点)を生産するシャンパーニュ屈指の大メゾンで、村内に本拠を構える。看板キュヴェ「グラン・シエクル」は11のグラン・クリュ村産ブドウを使用し、シャルドネ約55%にピノ・ノワール約45%を組み合わせ、複数ヴィンテージをブレンドして仕上げる非ヴィンテージのプレスティージュ・キュヴェ。ロゼ「アレクサンドラ」はピノ・ノワール約80%をマセラシオン(果皮浸漬)で醸した個性的な1本で、サロンおよびドゥラモットも同グループの傘下に置く。

地元の実力派グロワーとして注目されるのがLamiable(ラミアブル)だ。区画「Les Meslaines」(ブジーとの境界付近)の老樹ピノ・ノワール100%から仕込む単一区画キュヴェは、トゥール=シュル=マルヌのテロワールを純粋に映し出す逸品として評価が高い。

  • A. Chauvet(A.ショーヴェ) — 1848年創業のNM(ネゴシアン・マニピュラン)。ブジーやヴェルズネイに自社畑を持ち、コトー・シャンプノワ(赤ワイン)の生産でも知られる。旧マゾン・クロワ・サン=ジャックが1798年に建設したカーヴを現在も使用。
  • Pol Gesse(ポル・ジェス)Brisson Lahaye(ブリソン・ライエ)Faucheron Gavroy(フォシュロン・ガヴロワ) — 村を本拠とする地元生産者。
  • Bissinger & Co.(ビザンジェ・エ・コ) — 歴史あるネゴシアン系メゾン。

村名「トゥール=シュル=マルヌ」は「マルヌ川沿いの塔」を意味し、かつてこの地に建っていた塔に由来するとされる。シャンパーニュの歴史において、この村は格付け制度の観点から特異な位置を占めていた。かつてのエシェル・デ・クリュ(1980年代〜2010年廃止)では、ピノ・ノワールはグラン・クリュに相当する100%の評価を与えられていた一方、シャルドネはプルミエ・クリュに相当する90%に留まるという「品種別の分割格付け」が適用されていた。これはシャンパーニュ全体を通じても極めて稀な例であり、村のテロワールがピノ・ノワールに特化していることの歴史的な証左ともいえる。エシェル廃止後は品種を問わずグラン・クリュに統一され、現在はシャルドネを含む全栽培面積がグラン・クリュの格付けを得ている。

詳細を閉じる

「Tours-sur-Marne」を拠点とするシャンパン銘柄

参考情報