Cuisles / キュイル

キュイルは、世界でも珍しい「イライト(緑色粘土)」の地層を持つ特異なテロワールで、栽培面積の約75%をピノ・ムニエが占めるヴァレ・ド・ラ・マルヌオートル・クリュ村。この粘土層がムニエに通常とは異なるミネラル感と熟成力を与え、「ムニエでここまでできるのか」と驚かせるシャンパンが生まれます。

基本情報

地域圏(Région)Grand Est
県(Département)Marne
区(Arrondissement)Reims
郵便番号 : 51700
面積 : 2.77 km2
隣接するクリュ(Coomune)
Anthenay, Olizy, Châtillon-sur-Marne, Jonquery, Baslieux-sous-Châtillon,

「Cuisles」のぶどう畑

テロワールVallée de la Marne
- Vallée de la Marne Rive Droite
格付け86% Autre Cru [?]
栽培面積33.2 ha
- Chardonnay2.7 ha (8.1%)
- Pinot Noir5.5 ha (16.6%)
- Pinot Meunier25 ha (75.3%)
- その他0 ha (0%)

特徴

ピノ・ムニエが約75%を占めるキュイルのシャンパンは、一般的なムニエのイメージである「やわらかく早飲みスタイル」とは一線を画します。イライト土壌由来のミネラル感が骨格を形成し、赤い果実の丸みと塩気を帯びたテクスチャーが共存する独自のプロフィールが生まれます。 ムッセの「Terre d'Illite」はその典型で、95%ムニエながら数年の熟成を経ても崩れない構造感を持ちます。一方、希少なシャルドネ区画「Les Varosses」から生まれるムッセの「Anecdote」は、この村でブラン・ド・ブランが成立することを証明するキュヴェ。ムニエ好きにはもちろん、「ムニエの常識を更新したい」と感じているワイン好きに刺さる産地です。

テロワール

キュイルの畑はヴァレ・ド・ラ・マルヌ・リヴ・ドロワ(マルヌ川右岸)の側谷に位置し、標高148mの緩やかな斜面が主に東〜東南東を向いています。隣接するシャティオン=シュル=マルヌジョンクリーと地続きの丘陵地帯に属しながらも、キュイルの土壌構造はこの周辺でも際立って個性的です。 最大の特徴は、表層の砂質粘土・中間層のイライト(緑色粘土)・下層の白亜質粘土という三層構造。深さ約75cmに存在するイライト層は、コスメティクスにも使われる緑粘土と同質の素材で、チョーク主体の典型的なシャンパーニュ土壌と比べて保水性が高く栄養素に富んでいます。ブドウの根がこの層に集中して伸びることで、果実は干ばつストレスを受けにくく、ゆっくりと成熟します。 気候面では、マルヌ川に垂直に切れ込む側谷の地形がシェルターとなり、川沿いの村々より年間降雨量が約25%少ないという特異なマイクロクライメットを持ちます。保水性の高いイライト層と少雨の組み合わせは一見矛盾するようですが、この緊張関係がムニエに凝縮感とミネラルの緊張感をもたらすと生産者たちは語ります。

詳細

キュイルヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のヴァレ・ド・ラ・マルヌ・リヴ・ドロワ(マルヌ川右岸)に属する小村で、マルヌ川の支流であるRu de Jonqueryに沿った側谷の奥に位置します。コミューン面積は約277 ha、人口127人(2022年)という小規模な村ながら、33.20 haのブドウ畑を抱えます。北北東にジョンクリー、南東・南にバリュー=ス=シャティオン、南西にシャティオン=シュル=マルヌ、北北西にオリジーと接しています。

テロワールの核心は、この地域に固有の三層土壌構造にあります。表層の砂質粘土、深さ約75cmに存在するイライト(緑色粘土)層、そして下層の白亜質粘土がそれです。イライト層はコスメティクス・美容製品に使われる素材と同質で、典型的なシャンパーニュのチョーク土壌と比較して保水性・栄養素ともに高く、ブドウの根がこの層に集中します。過去にこの粘土層を活用した煉瓦・タイル工場が村に2軒存在したことが、土壌の特異性を物語っています。気候面では、マルヌ川に直交する側谷の地形が雨雲の通過を妨げるシェルターとなり、川沿いの村々と比べて年間降雨量が約25%少ない独自のマイクロクライメットを形成しています。主な畑区画としてはLes Fortes Terres(東向き、斜面上部)、Les Varosses(東向き、斜面上部)などが知られています。

キュイルを代表する生産者はMoussé Filsです。スローガン「Profondément Meunier(深くムニエ)」を掲げ、1923年から自家元詰めを続ける家族経営のレコルタン・マニピュラン(RM)。キュイル、ジョンクリー、シャティオン=シュル=マルヌ、ヴァンディエールに計5.6 haを所有し、年産約5万本。Club Trésors de Champagneのメンバーとして、100%ピノ・ムニエのスペシャル・クラブを初めてリリースした生産者でもあります(2005年ヴィンテージ)。主なキュヴェにはL'Or d'Eugène(ソレラ方式リザーブワイン)、Terre d'Illite(ヴィンテージ、95%ムニエ)、Anecdote(ブランク・ド・ブラン、Les Varossesのシャルドネ使用)があります。

もう一軒の注目生産者がHeucq Père & Fils、現在改称してアンドレ・ユック(Andre Heucq、RM)です。6 haを管理し、主要区画はキュイル(70%ムニエ、15%シャルドネ、15%ピノ・ノワール)。ビオディナミ農法を実践し有機認証を取得済み、一部オーク樽醸造を採用するなど手仕事へのこだわりが際立ちます。Cuvée Antique(ヴィンテージ)、Cuvée Originel(完全オーク熟成、70%ムニエ)、H-60(ブランク・ド・ブラン、海面下60m熟成・少量生産)などユニークなキュヴェが揃います。なお、Moussé家とHeucq家は親族関係にあり、127人規模の小村らしい結びつきが今もこの地のシャンパン造りを支えています。

キュイルの歴史は小村ならではの紆余曲折を経ています。1793〜1851年には人口が152人から248人へと増加した時期もありましたが、その後は漸減し現在も127人前後にとどまります。1973年7月1日に隣村シャティオン=シュル=マルヌと合併しましたが、2006年3月1日に独立コミューンとして再分離。シャンパーニュのコミューン数を318から319に戻したことで知られます。独立回復の背景には、独自のテロワールへの誇りと、それを守り続けてきた生産者たちの意志があったといえるでしょう。

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