「クラブ・トレゾール・ドゥ・シャンパーニュ」とは

Club Trésors de Champagne / クラブ・トレゾール・ドゥ・シャンパーニュ

重厚なシルエットのそのボトルに「Spécial Club(スペシャル・クラブ)」の文字があれば、それはクラブ・トレゾール・ドゥ・シャンパーニュのメンバーが手がけた一本だ。 クラブ・トレゾール・ドゥ・シャンパーニュは1971年、シャンパーニュ地方のグロワール(Recoltant-Manipulant:自家ブドウを自社で醸造・瓶詰めする生産者)たちが設立した団体で、当初は「クラブ・ド・ヴィティキュルトゥール・シャンパノワ」と称していた。1999年に現在の名称へと改められ、今日では28のRM生産者がメンバーに名を連ねる。発足当時からのメンバーであるポール・バラ、ガストン・シケ、ピエール・ジモネといった名前は、RM生産者の世界では広く知られた存在だ。 ■ スペシャル・クラブとはどんなシャンパーニュか クラブのメンバーが「スペシャル・クラブ」の名でリリースできるのは、各生産者の最上位キュヴェ(特別な区画や収穫年の果実を用いた、いわゆるプレステージ・シャンパーニュ)に限られる。しかもそれは毎年リリースされるわけではない。品質水準を満たさないと判断されたヴィンテージはリリース自体が見送られ、2003年のように加盟全生産者がスペシャル・クラブを発売しなかった年もある。 品質基準はルールとして明文化されており、ブドウの栽培・醸造・熟成は必ず生産者自身の手で行うことが求められる。瓶内熟成(ルミュアージュ前のオリと接触した状態での熟成)は最低3年以上が義務づけられており、さらにスティルワイン(発泡前のベースワイン)の段階と瓶詰め後の発売前の、計2回の審査委員会による試飲検査に合格しなければならない。どちらかの審査で基準を下回れば、そのロットはスペシャル・クラブとして市場に出ることはできない。 ■ 共通ボトルが語る哲学 スペシャル・クラブの特徴としてよく話題になるのが、メンバー全員が使う共通デザインのボトルだ。ラベルのデザインは生産者ごとに異なるが、ボトルの形状は統一されている。これはSDGsという言葉が生まれるより遥か以前から実践されていた取り組みで、ボトル生産の一元化による資源削減や輸送コストの効率化を目的としている。均一なデザインを採用することで、ブランドの個性よりもテロワール(土地の個性)や品質そのものを前面に押し出す、という思想の表れでもある。 ■ シャンパーニュ産地における位置づけ シャンパーニュというカテゴリーは、モエ・エ・シャンドンヴーヴ・クリコのような大手メゾンのイメージが強い。しかし近年、自らのブドウ畑を持ち、そのテロワールを表現することにこだわるRM生産者への注目が世界的に高まっている。クラブ・トレゾール・ドゥ・シャンパーニュはそのRM運動の先駆けともいえる存在で、1970年代に「小規模生産者も品質で勝負できる」という姿勢を打ち出した点で産地史的な意義は小さくない。 メンバーはシャンパーニュの4つの主要栽培地域(コート・デ・ブランモンターニュ・ド・ランスヴァレ・ド・ラ・マルヌコート・デ・バール)に分散しており、各自がそれぞれの土地に根ざした個性を持つ。スペシャル・クラブを飲み比べることは、ある意味でシャンパーニュの地理と多様性を学ぶ実践的なルートにもなる。 ■ 選ぶ楽しみ スペシャル・クラブはすべてヴィンテージ表示のある単年もの(ミレジメ)であるため、収穫年の気候の影響を正直に映し出す。大手メゾンのNV(ノン・ヴィンテージ)とは異なり、ブレンドによる味の均質化を行わない分、良年には突出した表情を見せ、難しい年には選ばれないという緊張感がある。価格帯はRM生産者のプレステージ・キュヴェとして設定されているが、大手メゾンの同格ボトルと比べれば手の届きやすいものも少なくない。初めてRM生産者のシャンパーニュに踏み込む際の入口として、あるいはテロワールの違いを意識した飲み比べの対象として、スペシャル・クラブは興味深い選択肢のひとつになるだろう。

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