「マジステール」とは

Magistere / マジステール

マジステール(Magister)は、1991年にシャンパーニュ地方で設立されたGIE(経済利益団体)だ。ラテン語で「師」「指導者」を意味するその名が示すとおり、ブドウ栽培における植物防除の「教師」的役割を担う存在として生まれた。正式名称はGIE Magister、活動拠点はマルダイユ(Mardeuil)に置かれている。 設立のきっかけは1990年のこと。CIVC(シャンパーニュ栽培・ワイン製造業者委員会)のモンコンブル氏とSRPV(植物保護局)のブーシェ氏による研究交流が端緒となり、アヴィズ、ヴェルズネイマレイユ=ル=ポールなど産地の内外に広がる複数のコミューンで試験的な圃場観察が開始された。その成果をもとに翌1992年、栽培指導機関・協同組合連合・流通業者が参画するかたちで正式に組織として発足した。 ■ リュット・レゾネの実践拠点として 「リュット・レゾネ(lutte raisonnée)」とは、病害虫の防除において農薬を一律に排除するのではなく、圃場の状況をつぶさに観察し「必要なときに、必要な分だけ」介入するという考え方だ。有機農業(ビオロジック)とは異なり、合成農薬の使用を完全に否定しないが、環境への負荷を科学的に最小化することを目指す。マジステールはシャンパーニュ産地全体においてこの理念を体系化・普及させた中心的存在といえる。 活動の軸は年間を通じた圃場観察にある。4月から8月の生育期には10名前後の技術者が、マルヌ、エーヌ、オーブの3県にわたる175以上のコミューンで約500区画を毎週巡回する。得られたデータと気象予報を組み合わせ、病害虫の圧力をAOCシャンパーニュ全体から個別区画のスケールまで評価したうえで、栽培者に処理方針を勧告する。「ブー・ド・パルセル(畑の端)」と呼ばれる週次の現地集会では、技術者と栽培者が顔を合わせて情報を共有し合う。 ■ 成果と現在の役割 1990年代、マジステールの観察ネットワークはハダニや螟虫(ノメイガ)に対する被害閾値(治療が必要となる害虫密度の基準値)の設定に貢献し、殺虫剤・殺ダニ剤の使用量を大幅に削減させた実績を持つ。さらにハダニの天敵であるカブリダニ(Typhlodrome)の個体数回復を支援し、1993年以降は性フェロモンを利用した「フェロモン交信攪乱法」の普及にも先導的な役割を果たしてきた。 現在は農薬指導にとどまらず、施肥・土壌管理、環境認証(HVE=高環境価値認証、VDC=シャンパーニュ持続的農業認証)の取得サポートまで業務を広げ、産地全体のサステナビリティを底上げする知識の拠り所として機能している。

関連用語