「レ・マン・デュ・テロワール・ド・シャンパーニュ」とは

Les Mains du Terroir de Champagne / レ・マン・デュ・テロワール・ド・シャンパーニュ

「テロワールの手」と訳せるこの名前を掲げた団体が、シャンパーニュ産地に存在する。レ・マン・デュ・テロワール・ド・シャンパーニュ(Les Mains du Terroir de Champagne)は、シャンパーニュ地方のヴィニュロン(栽培・醸造を一手に担う生産者)たちが結成した任意団体だ。現在は16〜18名ほどのメンバーが参加しており、それぞれが異なるテロワール——つまり土地の個性——を体現するシャンパーニュを造っている。 ■ なぜこの団体が生まれたのか シャンパーニュといえば、大手メゾン(生産者)が手がける安定したブレンドの泡というイメージが根強い。しかしそれとは別に、畑を自ら耕し、みずからの手でシャンパーニュを仕立てるRM(レコルタン・マニピュラン:栽培醸造元)と呼ばれる小規模生産者たちが存在する。彼らの強みは、自分の畑と村のテロワールに深く根ざした個性豊かなシャンパーニュを生み出せることだ。一方で、販路開拓や情報発信において大手には太刀打ちしにくいという現実もある。 そこで複数のヴィニュロンが「団結すれば力になる」という発想のもとに集い、この団体を立ち上げた。メンバー同士が醸造の知見や畑の知識を共有しながら、自身のテロワールを守り、伝えていこうというのが基本的な姿勢である。 ■ 多様なテロワールを一堂に 加盟生産者の出身地はシャンパーニュ産地全域にわたる。コート・デ・ブラン、モンターニュ・ド・ランス、ヴァレー・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・バール、セザネ地区、ヴァレー・ド・ラルドル……それぞれ土壌も気候も微妙に異なり、使われるブドウ品種の割合や表現されるスタイルも変わってくる。同じシャンパーニュでも、これだけ多彩な個性が存在するという事実を体感できるのが、この団体の大きな魅力だ。 毎年春に開催されるテイスティング・サロンは、その象徴的な場となっている。「プランタン・デ・シャンパーニュ」と呼ばれる業界向けイベントの一環として、ランスで開かれるこのサロンでは、各生産者がシャンパーニュ3本とアンシャンテ(発酵前後の澄んだワイン、ヴァン・クレール)2本を持ち寄る。商取引は一切行われない純粋な試飲会であり、各ドメーヌが横並びで評価される。来場者の約60%が海外のプロフェッショナルということからも、国際的な注目度の高さがうかがえる。 ■ シャンパーニュ産地における意義 大手メゾンが産地全体のブランドイメージを支えてきた一方、こうした小規模ヴィニュロンの台頭は、シャンパーニュの多様性を世界に広める新しい潮流となっている。ヴィラージュ(村)単位、さらにはリュー・ディ(特定区画)単位での個性を打ち出すスタイルは、ブルゴーニュワインのテロワール表現に近い感覚でシャンパーニュを味わいたいという消費者の需要にも応えている。 レ・マン・デュ・テロワール・ド・シャンパーニュは、「シャンパーニュは均質なものではなく、土地ごとに異なる表情を持つ」というメッセージを体現した団体だ。大手ブランドとは一線を画す、テロワール主義のシャンパーニュを探求する入り口として、その存在は初心者・中級者を問わず覚えておく価値がある。

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