「キンメリジャン」とは
Kimmeridgian / キンメリジャン
キンメリジャンとは、地質学上のジュラ紀後期にあたる約1億5700万〜1億5200万年前の地層・時代区分を指す言葉だ。名前の由来はイギリス南部ドーセット州の村キンメリッジ(Kimmeridge)。19世紀にフランスの地質学者アルシッド・ドービニーがこの地で独特の地層を同定し、命名した。石灰質の泥灰土(マール)と薄い泥灰岩が積み重なった構造で、かつて浅い海の底だったことを物語る貝類や海洋生物の化石が豊富に含まれているのが特徴だ。
ワインの文脈でキンメリジャンが注目される理由は、フランスを代表するいくつかの銘醸地の地下にこの地層が広がっているからだ。シャブリ、サンセール、プイィ・フュメ、そしてシャンパーニュの一部——これらの産地に共通するのが、このジュラ紀の地層である。単なる偶然ではなく、地質学的には「パリ盆地」と呼ばれる大きなすり鉢状の構造の外縁部に沿って、セーヌ川やオーブ川などの河川が長い年月をかけてキンメリジャン層を削り出した結果、各産地で地表に露出することになった。いわば地下でつながった地質の「弧」のようなものだ。
キンメリジャンの土壌が与えるワインへの影響については、ミネラル感、白亜質のきりっとした酸、そして塩気を帯びたような奥行きが挙げられることが多い。化石を多く含む石灰質の土壌は水はけがよく、同時に適度な保水力も持つ。ブドウの根が深く張れる環境が整うことで、単純に果実味だけでは語れない複雑さがワインに宿ると考えられている。
「キンメリッジ」とも呼ばれるがイギリス南部の地名としての認知が主で、ワイン・テロワールの文脈では基本的に学術的な地質時代区分の術語であるキンメリジャン(Kimmeridgian)が使用される。
■ シャンパーニュにおけるキンメリジャン
シャンパーニュ全体の土壌といえばチョーク(白亜)が代名詞として知られているが、じつは産地内で一枚岩ではない。北部のコート・デ・ブラン、マルヌ渓谷などの主要エリアが上部白亜紀のチョーク質土壌を主体とするのに対し、南部のコート・デ・バール(オーブ県)ではキンメリジャン石灰岩が卓越する。シャブリやサンセールと同じ地層の上にブドウが育っているわけだ。コート・デ・バールの生産者が「ブルゴーニュの隣人のほうが近く感じる」と口にするのも、この地質的な背景を踏まえれば納得できる。
コート・デ・バールはピノ・ノワールの比率が高く、赤系果実の豊かさと同時に、キンメリジャン由来の石灰質がもたらすと言われる精緻な骨格が特徴として語られることが多い。シャルドネが主役のコート・デ・ブランとは異なるスタイルのシャンパーニュがここから生まれており、産地の多様性を語る上で欠かせない視点のひとつになっている。
関連用語
Parcel, パーセル, Terroir, テロワール, Grand Cru, グラン・クリュ, Climat, クリマ, Clos, クロ, Monopole, モノポール, Lieu-dit, リュー・ディ, リューディ, Lieux-dits, Premier Cru, プルミエ・クリュ, Cru, クリュ, Autre Cru, オートル・クリュ, Échelle des Crus, エシェル・デ・クリュ, Portlandian, ポートランディアン