「ポートランディアン」とは
Portlandian / ポートランディアン
ポートランディアン(Portlandian/フランス語ではしばしばチトニアン Tithonien とも呼ばれる)とは、ジュラ紀後期、約1億5000万年前から1億4500万年前頃に形成された地層を指す地質学用語です石灰質の硬度が増した地層で、その名はイギリス南部ドーセット海岸のポートランド島に由来します。シャンパーニュやシャブリのテロワールを語るうえで頻繁に登場する「キンメリジャン」のすぐ上に重なる地層であり、ワイン愛好家の間では両者がセットで語られることの多い土壌区分です。
■ キンメリジャンとの関係
ポートランディアンを理解するには、まずキンメリジャンとの関係を押さえておく必要があります。キンメリジャンは貝殻片を多く含む粘土石灰質の泥灰土(マール)で、シャブリのグラン・クリュやコート・デ・バールの土壌基盤として知られています。これに対しポートランディアンは、同じく粘土石灰質土壌でありながら、石灰岩に貝殻はほとんど含まれず、キンメリジャンよりも粘土の含有量が多いという特徴を持ちます。地質年代としてはキンメリジャンより新しい層にあたり、いわば「キンメリジャンの上位互換」のような位置づけです。
なお地質学的に厳密には、ポートランディアンという呼称はイギリス式の分類に由来する通称であり、国際的な層序区分ではこの時代は「チトニアン」として扱われるのが正式とされています。フランスのワイン関係者の間では今も両方の呼び名が混在して使われており、教本によって表記が揺れることがある点は、初心者がやや戸惑いやすいポイントかもしれません。
■ シャンパーニュ産地における位置づけ
シャンパーニュ地方でこの地層が特に注目されるのは、南部のコート・デ・バール地区です。コート・デ・バールはキンメリジャン土壌を主体とする産地として知られますが、その上層・周辺部にはポートランディアンの地層も分布しており、両者は地質学的に連続した一帯を形成しています。実際、シャンパーニュとシャブリは行政区分こそ離れているものの、地質学的にはひと続きのキンメリジャン~チトニアン(ポートランディアン)の石灰質帯として捉えられることがあり、コート・デ・バールが「シャブリの飛び地」のように語られる理由のひとつにもなっています。
ポートランディアン土壌に植わるピノ・ノワールから生まれるシャンパーニュは、リッチで骨格のしっかりした味わいになりやすいとされ、特にブラン・ド・ノワール(黒ブドウのみで造られる白いシャンパーニュ)との相性で語られることが多い土壌です。ただし、ポートランディアン単独がコート・デ・バールの個性を決定づけているというより、キンメリジャンと並ぶ「もう一つの石灰質基盤」として、地域全体のミネラル感や酸のニュアンスに寄与していると理解するのが実態に近いでしょう。
シャンパーニュの解説でキンメリジャンほど頻繁には登場しないものの、土壌の話題が深まると必ずと言ってよいほど隣接概念として顔を出すのがこのポートランディアンです。一見マイナーな地質用語ですが、コート・デ・バールという産地の成り立ちや、シャブリとの地理的・地質的なつながりを理解するうえでは欠かせないキーワードといえます。
関連用語
Parcel, パーセル, Terroir, テロワール, Grand Cru, グラン・クリュ, Climat, クリマ, Clos, クロ, Monopole, モノポール, Lieu-dit, リュー・ディ, リューディ, Lieux-dits, Premier Cru, プルミエ・クリュ, Cru, クリュ, Autre Cru, オートル・クリュ, Échelle des Crus, エシェル・デ・クリュ, Kimmeridgian, キンメリジャン, キンメリッジ