「アルバンヌ」とは

Arbanne / アルバンヌ

シャンパーニュには7つの認定品種(2025年以降は8つ)が存在しますが、その中でおそらく最も知名度が低いのがアルバンヌです。名前を聞いたことがある人でも、実際に飲んだことがある人はほとんどいないかもしれません。それほどまでに希少な品種です。 アルバンヌは白ワイン用の品種で、フランス語の中世ラテン語「albana(白いブドウ)」に語源を持ちます。歴史的には19世紀初頭にはすでにシャンパーニュでの栽培が記録されており、1801年にジャン=アントワーヌ・シャプタル(当時の農業担当大臣でもあった化学者)が高品質なワインを生む品種として言及しています。かつてはシャンパーニュ南部のオーブ県(コート・デ・バール)に相当量が栽培されていましたが、19世紀末のフィロキセラ禍と、その後の品種整理によって急速に姿を消しました。20世紀末には全フランスで1ヘクタール以下しか残っていないほどの絶滅寸前状態にまで追い込まれています。 農業的特性としては、芽吹きが非常に早いにもかかわらず、成熟は遅いという両極端な性格を持ちます。収量は少なく、寒露や霜への保護が必要な繊細な品種でもあります。小さく密集した房に小粒の果実をつけ、果皮は黄金色を帯びます。その気難しさゆえ、生産性重視の大量生産には全く向きません。 ワインのスタイルとしては、際立って高い酸と、白い花(サンザシ、カーネーション)、熟した黄色い果実(マルメロ、皮付きりんご、桃)のアロマが特徴とされています。またハーバル(草本的)なニュアンスも持ちます。高い酸は気温上昇が続く現代の気候変動の時代において、シャンパーニュの清涼感を保つうえで魅力的な特性として再評価されつつあります。 シャンパーニュにおいて現在アルバンヌを使用しているのはごく少数の生産者に限られます。その中でも代表格が、オーブ県ビュクセイユムタールです。同メゾンはアルバンヌ100%のシャンパーニュ「セパージュ・アルバンヌ・ヴィエイユ・ヴィーニュ」をリリースしており、古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)からの凝縮した果実で知られます。また、ドラピエが全7品種(後に8品種)を使ったキュヴェを手がけており、アルバンヌをはじめとする希少品種の保存と普及に積極的な姿勢を示しています。これらの取り組みは単なる珍品づくりではなく、シャンパーニュの遺伝的多様性を守り、未来への選択肢を残そうとする哲学的な試みとも言えます。

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