「アンフュメ」とは

Enfumé / アンフュメ

シャンパーニュにはいくつかの品種が複数の名前で呼ばれていますが、このアンフュメはその最も個性的な例のひとつです。「アンフュメ」とはフランス語で「煙に満ちた」という意味で、実体はピノ・グリ(またはフロモントー)という品種のシャンパーニュ地方における通称です。その名の通り、スモーキーでナッティーな香りが非常に強いことからそう呼ばれています。 品種の素性を辿ると、ピノ・グリはピノ・ノワールの色素変異種です。ピノ・ノワールの果皮が突然変異で灰色〜ピンクがかった色になったものがピノ・グリで、さらにそのピノ・グリが変異して白くなったものがピノ・ブランという関係にあります。ワイン世界で「ピノ一族」の系譜は幅広く、互いに密接に絡み合っています。 一般的なワインとしてのピノ・グリは、アルザスで最も典型的なスタイルが知られています。重厚でリッチなボディ、スパイシーなニュアンス、桃や洋梨、スモーク、蜂蜜のような複雑な香りが特徴的で、辛口から甘口まで幅広いスタイルがあります。イタリアではピノ・グリージョとして親しまれており、こちらはアルザスと正反対の淡白でシャープなスタイルが代表的です。ニュージーランドのマールボロでも独自の芳醇なスタイルが生まれています。 シャンパーニュにおけるピノ・グリ(アンフュメ)は、酸が低いという点が課題です。シャンパーニュには高い酸が求められるため、この品種の低酸はブレンドに使う際の制約となります。一方で「煙がかった、ナッツのような強烈な香り」はブレンドに個性を加える面白い要素でもあります。シャンパーニュの公式解説によれば、このスモーキーさは口中でも持続するとされています。 気候変動との関係で言えば、気温が上昇するほど酸が失われやすいピノ・グリは、シャンパーニュにとってやや不利な条件になりつつあります。フィロキセラ以前には一定の存在感を持っていたこの品種ですが、現在は全体栽培面積の0.3%以下にとどまる超希少品種です。現在でも使用しているのはごく少数の生産者で、ドラピエの7(または8)品種ブレンドにはこのアンフュメも含まれており、シャンパーニュの忘れられた歴史を一口に味わえる存在となっています。単独での評価よりも、歴史的・遺伝的な多様性の文脈で語られることが多い品種です。

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