Saint-Martin-d'Ablois / サン=マルタン=ダブロワ

サン=マルタン=ダブロワは、スコットランド女王メアリーが「この美しきフランスを離れることなど」と嘆いたと伝わる村。ピノ・ムニエが畑の8割を占め、石灰岩とチョークが溶け込んだ土壌から、ふくよかで親しみやすい一杯が生まれます。

基本情報

地域圏(Région)Grand Est
県(Département)Marne
区(Arrondissement)Épernay
郵便番号 : 51530
面積 : 21.88 km2
隣接するクリュ(Coomune)
Épernay, Vinay, Brugny-Vaudancourt, Œuilly, Festigny, Boursault, Le Baizil,

「Saint-Martin-d'Ablois」のぶどう畑

テロワールVallée de la Marne
- Côteaux Sud d'Epernay
格付け86% Autre Cru [?]
栽培面積82.1 ha
- Chardonnay9.2 ha (11.2%)
- Pinot Noir8.2 ha (10%)
- Pinot Meunier64.6 ha (78.7%)
- その他0.1 ha (0.1%)

特徴

畑の約8割をピノ・ムニエが占めるこの村では、肉厚でふくよか、思わず食が進むようなジューシーな味わいが基本線。そこに石灰岩とチョークの土壌が効かせるミネラルの振動感が重なり、丸みの中にもピリッとした輪郭が残るのが面白いところです。ジャマールの「Trilogie」のように三品種を均等にブレンドした造りもあれば、古樹シャルドネ100%のヴィンテージ・ブラン・ド・ブランのような対照的な一本も。多様な斜面の向きが生産者ごとの個性差をそのまま味わいに反映させており、食前酒として軽やかに楽しむもよし、コクのある料理に合わせてじっくり向き合うもよし。懐の深さこそがこの村らしさです。

テロワール

サン=マルタン=ダブロワはヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区の中でもコトー・シュッド・デペルネと呼ばれるサブゾーンに属し、ル・キュブリ川とダルシー川が刻むV字谷に沿って畑が広がります。下層にチョーク(白亜)が走るのはこの地区一帯に共通する特徴ですが、当村とヴィネ側ではそこに石灰岩質の地層が混じり込むのが際立った個性。さらに畑全体にはムルィエール(砥石層)の鉱脈が走り、区画によってはフリントや礫が目立つ部分もあります。川の両岸には向きの異なる丘が複雑に連なり、画一的でない多様な区画構成を生み出しています。標高は110〜241mと幅があり、年間平均気温10.7℃、降水量774㎜という冷涼な気候の中、スパルナシアン層由来の粘土を好むピノ・ムニエが主役の座を占めます。この石灰岩とチョークが混在する土壌こそが、ムニエの豊かさに鉱物的な引き締まりを与える鍵となっています。

詳細

サン=マルタン=ダブロワはエペルネの南西に位置し、グラン・エスト地域圏マルヌ県エペルネ郡に属するコミューンです。面積21.88km²、人口1,336人(2023年)。村内にはル・キュブリ川の源流があり、同川は14kmにわたって6つの村を流れ、マジャンタでマルヌ川に合流します。このキュブリ川が形成する谷と斜面に畑が展開しており、北東にエペルネ、東にヴィネ、南東から南にかけてブリュニー=ヴォダンクール、南西にLe Baizil、北西にフェスティニーウイィ、北北西にブルソーと、周囲を多くの村に囲まれた位置関係にあります。コミューン内にはモン・バイヤン、ラ・フルリ、ル・スールドンといった小集落も含まれ、住民はアブルティアンと呼ばれます。

テロワールの面では、当村はコトー・シュッド・デペルネ地区の中でもヴィネ側とともに石灰岩質の地層がチョークに混じる点で際立っています。畑全体にムルィエール(砥石層)の鉱脈が走り、区画によってはフリントや礫の含有率が高くなることも。キュブリ川の両岸には向きの異なる丘が連なり、ヴィネブリュニー=ヴォダンクールの畑と連続する形で多様な区画が入り組んでいます。こうした複合的な地質と地形の組み合わせが、ムニエ中心でありながら一様でない味わいの幅を生み出す土台となっています。栽培面積はピノ・ムニエが圧倒的多数を占め、ミネラル感を支える石灰岩・チョーク層との組み合わせが、当地ならではの個性を形づくっています。

生産者の顔ぶれも多彩です。最も規模が大きいのはジャマール(E. Jamart et Cie)で、ムニエ50%・シャルドネ40%・ピノ・ノワール10%という畑構成を背景に、三品種を等分にブレンドしたヴィンテージ・キュヴェ「Trilogie」と、ブラン・ド・ブランを手がけています。コトー・シュッド・デペルネのネゴシアンの中でも層の厚さを感じさせる存在です。

  • ジャン・ピエール・ラルエール(RM)— ムニエ70%・シャルドネ30%という畑構成を持ち、ヴィニュロン・アンデパンダンの会員でもある生産者。
  • ディディエ・デュコ・フィス(RM)— 計8haの畑からムニエ70%中心のキュヴェを軸に、年産6万本という規模で展開。ヴィンテージにはシャルドネとピノ・ノワールの比率を高めて仕立てる。
  • マーク・リゴロット(RM)— 古樹シャルドネ100%によるヴィンテージ・ブラン・ド・ブランを手がける、村内では珍しいシャルドネ専門タイプの生産者。
  • ド・ヴィルパン(RC)— ブルソー近郊のFerme de Boursoisに起源を持ち、かつてはデュセス・デュゼ家の所有地だった畑(1912年売却)を受け継ぐ。ヴィンテージはピノ・ノワール主体。

地名「Ablois」はラテン語のablutus(洗われた・水を与えられた)に由来するとされ、ル・スールドン川の源流を持つこの地が「水の聖マルタン」を意味すると解釈されています。文献上の初出は1145年、エペルネのサン=マルタン修道院の文書に「Sanctus Martinus de Avleis」として記録されたのが最初で、1152年には同修道院の聖職者がこの地に定住しました。歴史上の逸話としては、1560年代にスコットランド女王メアリー(マリー・スチュアート)がアブロワ子爵領を獲得し、1561年にサン=マルタン修道院でのミサに参列、その後スールドンの森を訪れて望郷の念を語ったと伝わります。近代に入ると1903年にエペルネ〜モンミライル間の鉄道線が開通して村に駅が設けられましたが、1937年に廃線。第一次大戦では村が第二次マルヌ会戦の前線近くに位置したため多くの犠牲者を出し、1952年に現在の「Saint-Martin-d'Ablois」という旧名に復帰しました。こうした歴史を経て、今ではコトー・シュッド・デペルネを代表する村のひとつとして、その個性的なテロワールに改めて注目が集まっています。

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「Saint-Martin-d'Ablois」を拠点とするシャンパン銘柄

参考情報