「テラ・ヴィティス」とは

Terra Vitis / テラ・ヴィティス

テラ・ヴィティス(Terra Vitis)は、フランス農業食料省に公認された持続可能なブドウ栽培のための認証制度だ。ラテン語で「大地のブドウ」を意味するその名が示すとおり、土地と人とワインの関係を根本から問い直す取り組みとして1998年にボージョレーの生産者たちによって創設された。フランス全土のワイン産地に特化した国家レベルの持続可能性認証としては、現在唯一の存在とされている。 ■ 認証の仕組みと三つの柱 テラ・ヴィティスの認証は、持続可能な開発の三つの柱——環境的責任・社会的責任・経済的持続性——に基づいて設計されている。約80項目にわたる審査基準が設けられており、ブドウ畑での農薬・化学肥料の使用制限から、生態系の保全(生け垣の植栽、野生動物の生息場所の確保など)、水資源の管理、さらにはワイナリーでの醸造工程まで、栽培から瓶詰めに至るすべての段階が対象となる。 重要なのは、この認証が毎年更新される点だ。各生産者は独立した第三者機関による年次審査を受けなければならず、一度取得すれば維持できるわけではない。消費者にとっては、そのボトルに貼られたロゴが「継続的な取り組みの証」として機能している。 ■ オーガニックやビオとどう違うのか テラ・ヴィティスの認証は、有機農業(Agriculture Biologique、通称AB認証)やビオディナミとはアプローチが異なる。ABやビオディナミが化学合成農薬・化学肥料の全面禁止を前提とするのに対し、テラ・ヴィティスは「合理的農業(viticulture raisonnée)」の考え方を採用している。これは、環境への影響を最小限に抑えながらも、現場の状況に応じて判断できる実用的な枠組みだ。 フランス政府の環境価値認証(HVE)においてはレベル2に相当し、有機農業のHVEレベル3には満たないものの、一般的な慣行農業より明確に一歩進んだ基準として位置づけられている。 ■ シャンパーニュにおけるテラ・ヴィティス シャンパーニュ地方でテラ・ヴィティスの認証を取得している生産者は現時点で29軒とされており(シャンパーニュ農業会議所の情報による)、産地全体の認証取得者数としては多いとは言えない。シャンパーニュには独自の持続可能な栽培認証「ヴィティカルチャー・デュラブル・アン・シャンパーニュ(VDC)」も存在しており、地域密着型の規定を持つVDCと、全国共通の基盤を持つテラ・ヴィティスがそれぞれの特徴を活かしながら並立している状況だ。 テラ・ヴィティスがシャンパーニュ生産者に支持される場面では、国際市場における認知度が一つのメリットとして挙げられることが多い。フランス国内外のプロフェッショナルや消費者に向けて、自らの取り組みを明示しやすいラベルとして機能するためだ。 ■ 消費者の視点から シャンパーニュを選ぶ際、テラ・ヴィティスのロゴはひとつの手がかりになる。「オーガニックではないが、環境や社会への配慮に真剣に向き合っている生産者である」というシグナルだ。絶対的な基準とまでは言えないが、第三者による客観的な検証が毎年行われている点は、自己申告に過ぎない「自然派」などのラベルとは異なる信頼性を提供している。 ワイン全体で見れば、テラ・ヴィティスはフランスの主要産地を横断する幅広い認証制度であり、ボルドーやブルゴーニュの著名シャトーから小規模生産者まで約1,880軒が参加している。シャンパーニュではまだ普及途上にあるが、持続可能な農業への関心が高まる中で、その存在感は徐々に増しつつある。

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