「フードル」とは

Foudre / フードル

■ ワイン全般における位置づけ フードルは、数千リットルから時に数万リットルにも達する大容量の木製発酵・熟成槽です。楕円形や円筒形の大きな樽を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。バリックやドゥミ・ミュイのような小樽と違い、ワインの量に対して木材が接する表面積の割合が非常に小さいため、木の香りやタンニンをワインに強く付与することはほとんどありません。その一方で、木樽特有のわずかな酸素透過は保たれるため、ステンレスタンクよりもゆっくりと穏やかに熟成が進むとされています。ドイツやアルザス、ローヌなど、伝統的に大樽での醸造を続けてきた産地は多く、イタリアの大型木樽「ボッティ」も考え方は近い存在です。 ■ シャンパーニュにおけるフードル シャンパーニュでは、ベースワインの発酵段階でフードルを用いる生産者が古くから存在します。新樽ではなく使い込んだ木を用いるため、木の香りを添えるためというよりは、マロラクティック発酵を含めた発酵・熟成環境を穏やかに保ち、テロワール由来の個性を活かすための道具という位置づけが強いのが特徴です。自社畑の古樹から収穫したヴァンダンジュを、あえて古いフードルで発酵させるといった使い方も見られます。 シャンパーニュは基本的にステンレスタンクによる管理主体の近代的な醸造が主流の産地であるだけに、フードルを使い続けるメゾンやヴィニュロン・アンデパンダンは、それ自体が伝統的な仕込みへのこだわりを示すシグナルとして語られることも少なくありません。搾りたての果汁を大きな木の器でゆっくり発酵させるという、ある意味で最も原初的な仕込み方法が、最新設備と並んで今も選択肢のひとつであり続けているのは興味深いところです。