「ホーロータンク」とは
Cuve émaillée / ホーロータンク
■ ワイン全般における位置づけ
ホーロータンクは、鋼鉄製タンクの内面をガラス質の琺瑯(ほうろう)でコーティングした醸造用容器です。20世紀半ば、ステンレスタンクが一般化する以前のワイナリーで広く使われました。鉄がワインに直接触れると金属的な異臭や変色の原因になりますが、内面をコーティングすることでそれを防ぎつつ、当時はステンレスより導入コストを抑えられる容器として普及した経緯があります。
現在では衛生管理や温度制御のしやすさからステンレスタンクが主流ですが、ホーロータンクを今も使い続ける造り手は一定数存在します。ステンレスに比べてわずかに酸素を通しやすく、口当たりが柔らかくなるといった意見もありますが、この点は造り手の経験則によるところが大きく、科学的に明確な結論が出ているわけではありません。
■ シャンパーニュにおけるホーロータンク
シャンパーニュでは、20世紀半ばに導入されたホーロータンクを今も使い続けているメゾンやヴィニュロン・アンデパンダンが少なくありません。多くの場合、木樽のように風味を付与せず、ステンレスタンクとも異なる質感を持つ中立的な容器として、ベースワインのデブルバージュ(果汁の澱引き)や発酵に使われます。オーク由来の香りに頼らず、テロワールや品種そのものの果実味を素直に表現したいという造り手にとって、ホーロータンクは選択肢のひとつになっています。
古い設備であることそのものに価値を置くわけではありませんが、ホーロータンクを使い続けている、あるいはあえて使うと明言しているメゾンは、素材の個性を主張しすぎない仕込みを志向していると読み取ることができます。紹介文で「ホーロータンク使用」と書かれていたら、木樽ともステンレスとも違う、控えめな存在感の容器だと理解しておくとよいでしょう。