シャンパン製法 ~シャンパンの製造工程~

シャンパン製法 ~シャンパンの製造工程~

シャンパンと普通のワインとの大きな違いは、醗酵の過程を2回行う「瓶内二次醗酵」という方法を取っているところです。
シャンパン製法は、通常のワインと同じ方法でベースとなる泡のないワインを造りますが、その後できたワインを瓶に入れて糖分と酵母を加え2度目の醗酵を促します。

醗酵(アルコール醗酵)とは酵母の働きによって糖分を分解して、アルコールと二酸化炭素を発生させる現象で、通常のタンクや桶、樽では、醗酵したワインから発生した二酸化炭素は空気中へと放出され、ワインの液内には残りません。

シャンパンはこの瓶の中という完全に密閉された環境で2度目の醗酵が行われることにより、発生した二酸化炭素の逃げ場がなくなり、ワインの中に溶け込みます。つまりシャンパンの栓を抜いたときに勢い良く出てくる泡は、ワインがアルコール醗酵を行う過程で発生した二酸化炭素なのです。

とても手間隙がかかる製法ですが、この手間は当然コストにも跳ね返るわけで、シャンパンが普通のワインよりも割高なのはこのためです。

シャンパン製法の製造工程は以下のような流れとなっています。

1. 収穫
Vendange / ヴァンダンジュ
通常9月中旬~10月初旬頃、手摘みによりぶどうを収穫します。畑の規模によりますが、数千人を動員するメゾンもあります。
2. 選果
Epluchage / エプルシャージュ
収穫されたぶどうは畑の脇で選別され、未熟なぶどうや傷付いた粒は捨てられます。この作業をエプルシャージュ(選果 / 悪果除去)と呼び、手間とコストのかかる作業ですが良いシャンパン造りには欠かせません。こうして選ばれたぶどうの房は葡萄が傷まないように、短時間で圧搾所に運び、酸味・糖度をチェックします。この段階でも基準値以下のものは捨てられます。
Epluchageには皮を剥くという意味もありますが、シャンパン製法の中では皮は剥きません。
3. 圧搾
Pressurage / プレシュラージュ
シャンパーニュ地方独特の浅く広い圧搾機で、黒葡萄の皮の色がつかないように静かに搾ります。4,000kgの葡萄から、初めに最初の10樽分(=2,050L)搾汁を得ます。これは「Cuvee / キュヴェ(一番搾り)」と呼ばれ、果実風味が豊で最も澄明な果汁です。その後、500L分の搾汁を得ます。これは「Premiere Taille / プルミエール・タイユ」と呼ばれています。
4. 清澄
Debourbage / デブルバージュ
ぶどうを圧搾して得た搾汁の不純物(ブールブ / Bourbes)を取り除きます。
搾汁液に亜硫酸を添加(上限50mg/l)し、同時に沈殿剤(ベントナイトなど)を加えて果 汁中の浮遊物を沈殿させ、一晩放置後、上澄み部分を別のタンクに移して醗酵に入ります。沈殿剤を使わないメゾンもあります。
5. 一次醗酵
Fermentation alcoolique
/ フェルマンタシオン・アルコーリック
通常の白ワインと同様に醗酵させ、果実に含まれる糖分がアルコールへと転換されます。畑ごと、葡萄品種ごとに、別々に樽やタンクで10~15日間程度醗酵させます。この醗酵・熟成過程で樽やタンク毎の味わいの個性をつかむことで、その後のブレンド比率を決定します。
6. 調合
Assemblage / アッサンブラージュ
翌2月頃、最初のオリ引き後に、Vins de Reserve / ヴァン・ド・レゼルヴ(前年あるいは前々年収穫のワイン)を含め、第一次醗酵で得た、年度、畑、種類の違うワイン(原酒)を数十種類ほど各メーカーのブランドイメージに沿って混合し、味わいを均一化させます。この際、通常は年月を経たワインに新しいワインをブレンドするため、収穫年を表示しないノン・ヴィンテージ・シャンパン(NV)となりますが、葡萄の出来の良い年には、その年のワインのみをブレンドして、ヴィンテージ・シャンパンとして収穫年を表示します。
7. 瓶詰
Tirage / ティラージュ)
ブレンド比率が決定したら、少量のシャンパン酵母と蔗糖を混ぜた液体(リキュール・ド・ティラージュ / liqueur de tirage)を加え、瓶詰し、瓶内二次醗酵に入ります。
8. 瓶内二次醗酵
Deuxieme Fermentation
/ ドゥジェム・フェルマンタシオン)
ワインは瓶内でゆっくり醗酵し、蔗糖が酵母の働きでアルコールと炭酸ガスに分解され、炭酸ガスは瓶内でワインの中に溶け込んでいきます。瓶内二次醗酵が終わると活動の終えた酵母が澱となり瓶内に残り、そのまま熟成に入ります。
9. 熟成
Vieillissement sur lie / ヴィエイスマン・シュル・リー(澱と共に熟成)
Sejour en Cave / セジュール・アン・カーヴ(カーヴでの熟成)
澱と共に寝かせることによって、アミノ酸である澱は自己分解をはじめ、旨みをワインへと戻していきます。2年で70%、6年で100%還元されるといわれています。こうして1~2年で微妙で繊細な泡となりますが、その後も、ノン・ヴィンテージで瓶詰から最低15ヶ月、ヴィンテージで3年、プレスティージで5年ほど熟成が行われ、更に独特の風味とキメ細かい泡が形成されて行きます。法的熟成期間はNVで15ヵ月、ヴィンテージで3年。
10. 動瓶
Remuage / ルミアージュ)
第2次醗酵後、瓶の側面に沈積した澱を瓶口に集める作業です。二次醗酵で作られた滓は、5~6週間に渡り毎日瓶を1/8ずつ回転させながら下向きに立てられ、最終的には倒立させ、瓶口に集められて行きます。
詳しくはルミアージュで
11. 澱抜き
Degorgement / デゴルジュマン)
澱が瓶口に完全に集まったら、冷凍槽に瓶口部分のみを浸し、澱部分を凍らせ抜栓すると、中のガス圧で凍った部分だけが飛び出して来て、澱を除去出来ます。
詳しくはデゴルジュマンで
12. リキュール添加
Dosage / ドザージュ)
オリを除去して減少した瓶内の不足分だけ、酵母が糖分を完全に分解してしまい糖分がなくなった瓶内に、甘みのあるリキュール(同タイプのシャンパン原酒の古酒、蔗糖等を混ぜたもの)を加えます。この時の蔗糖の量によってシャンパンのタイプが決まります。なお、この時添加する液体は門出のリキュール(リキュール・デグスペディション / liqueur d'expedition)と呼ばれています。
詳しくはドザージュで
13. 打栓
Bouchage / ブシャージュ)
ドザージュが終わったシャンパンの瓶にコルクが打たれ、圧力でコルクが飛び出さないように針金で締められます。また、ほとんどの場合この時点で化粧フォイルが瓶の首にすっぽりとかけられます。
14. ラベル貼り
Habillage / アビヤージュ)
最後に瓶にラベルが貼られて完成です。

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